頭痛や腹痛を繰り返す

起立性調節障害(OD)の患者様の中には、繰り返し頭痛や腹痛を訴える方が少なくありません。これらの症状は「OD身体症状項目」に含まれる重要なサインであり、午前中に症状が強く現れ、午後から夜にかけて改善するという特徴があります。
頭痛のメカニズム:交感神経の遅れた活性化
ODでは、午前中に交感神経が十分に活性化せず、脳への血流が不足するため頭痛が引き起こされます。午後になるにつれて交感神経が活発化し、血圧が上がることで頭痛が和らぐケースが多く見られます。
腹痛のメカニズム:自律神経と腸脳相関の乱れ
腹痛は、自律神経のバランスが崩れ、腸への血流が不十分になったり、腸蠕動が低下したりすることで発生すると考えられます。また、腸脳相関の観点から、ストレスや自律神経の乱れが腸に影響を及ぼし、腹痛や不快感、さらには嘔気や嘔吐を伴うこともあります。
これらの症状は患者様の努力不足や怠けによるものではなく、体内の仕組みが原因であることを理解し、適切な治療とサポートを行うことが重要です。

頭痛や腹痛の原因として考えられる疾患
以下に、頭痛や腹痛の背景に隠れている可能性のある代表的な疾患をご紹介します。
鉄欠乏性貧血
鉄分不足により全身の酸素供給が滞ると、特に脳血流が不足し頭痛を引き起こすほか、腸管への血流が不足することで腹痛が生じる場合があります。当院では、ヘモグロビン(Hb)値に加え、フェリチン値やMCV、TIBCなどを総合的に評価し、必要に応じて鉄剤を処方することで体調の改善を図ります。
うつ病やその他の精神疾患
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下だけでなく、頭痛や腹痛といった身体症状を伴うことがあります。ただし、ODのように午後から症状が改善することはなく、一日を通じて不調が続くのが特徴です。適切な鑑別診断を行い、治療を進めることが重要です。
発達障害
発達障害のあるお子様では、セロトニン不足や自律神経の調整不全により頭痛や腹痛が生じる場合があります。特に、ストレスや睡眠不足が症状を悪化させることが多いため、適切な対応が必要です。
甲状腺機能異常
甲状腺ホルモンの異常は代謝や体温調整、自律神経に影響を及ぼし、片頭痛や消化器症状を引き起こすことがあります。特に甲状腺機能亢進症では、腸蠕動が活発になりすぎて腹痛や下痢、嘔吐を伴うことがあるため注意が必要です。
副腎機能低下
副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の分泌が不安定になると、頭痛や腹痛だけでなく、低血圧や倦怠感、嘔吐など多様な症状が現れます。慎重な検査を行い、適切な治療を進めることが重要です。
その他の疾患
脳腫瘍、心臓病、膠原病、睡眠時無呼吸症候群なども、頭痛や腹痛の原因となる場合があります。これらの疾患には特有の症状があるため、専門的な診断が欠かせません。

当院の診断とサポート
当院では、朝起きられない症状やその他の体調不良の原因を特定し、適切な治療へと導くために、まずは丁寧な問診を行います。その後、必要に応じて以下の検査を実施し、さまざまな疾患の可能性を慎重に除外しながら診断を進めていきます。
新起立試験: 起立時の血圧や心拍数の変動を確認し、起立性調節障害の可能性を評価します。
血液検査: 鉄分や栄養状態を詳細に分析し、体内の不足が疑われる場合は栄養補給を指導します。
画像検査: 必要に応じ、CTやMRIなどの画像検査を連携病院で実施し、内臓や脳の異常の有無を確認します。
耳鼻科・眼科的疾患の鑑別: めまいや立ちくらみなどがある場合、耳鼻科や眼科での専門的な診断が必要と判断されれば、適切な専門医との連携を図ります。
診断後は、ほとんどの患者様に対して栄養指導を行い、プロテインや鉄剤の摂取を推奨しています。最近では、プロバイオティクスの観点から腸内環境の整備も取り入れており、ご希望の方にはその具体的な方法もお伝えしています。特に栄養療法は、短期間での改善が期待できる方もおり、1週間ほどで何らかの症状軽減を感じる患者様もいらっしゃいます。多くの場合、3か月ほど継続していただくと、初診時より体調が改善していることを実感いただけます。
プロテインや鉄剤の摂取が難しい患者様には、個々の状況に合わせた対応策をご提案し、ご家族と一緒に最適な方法を見つけながらサポートを続けていきます。また、親御様や学校関係者への説明も積極的に行い、周囲の理解を得られるようお手伝いをしております。患者様やご家族が安心して治療に臨めるよう、長期的に寄り添いながら支援してまいります。
サポートの継続
当院では、初診から栄養療法や生活指導を開始し、3か月ほどで多くの患者様が体調の改善を実感されています。偏食や錠剤の摂取が難しい患者様には、無理なく続けられるよう個別に工夫した方法を提案し、日々のケアが負担とならないよう支援しています。また、ご家族や学校など周囲のサポートが必要な場合も、どうぞご相談ください。患者様が安心して治療を続けられるよう、長期にわたりしっかりとサポートいたします。









