「起立性調節障害という病気をなくしたい」 ―― 山口里恵が描く、これからの医療
2026.6.26
起立性調節障害(OD)や不登校に悩む子どもたちと家族に寄り添う「Health&Cureクリニック赤坂」。
診療を続ける中で、山口里恵院長はある確信を深めてきました。
それは、「この病気は本来、予防できる可能性がある」という考えです。
栄養、腸内環境、生活習慣。
日常の中にある要素を整えることで、体は本来のバランスを取り戻していく――。
山口院長は、単に症状を治す医療ではなく、そもそも病気が生まれない社会を目指したいと語ります。
今回は、山口院長が思い描く医療の未来について、お話を伺いました。
「卒業する医療」を目指しています
―― 先生がよくおっしゃる「卒業する医療」とは、どんな考え方でしょうか?
「私は、“ずっと通い続ける医療”を目指しているわけではないんです。
むしろ、患者さんが元気になって、クリニックを卒業していく。
それが一番いい形だと思っています。
実際に、起立性調節障害のお子さんの中には、
栄養状態を整えて生活を見直すことで、数か月で大きく改善していくケースも少なくありません。
ある小学校6年生の女の子は、最初は学校にほとんど通えない状態でした。
診療とともに食事を見直し、酵素ジュースや鉄の補充を続けていったところ、夏頃には体調が安定し始めました。
そして秋には学校にも通えるようになり、
最終的には中学受験にも挑戦して、第一志望の学校に合格したんです。
そのとき、ご家族と一緒に本当に喜びました。
体調が安定し、血液検査の数値も整えば、治療は卒業です。
私は、そうやって“元気になってクリニックを卒業していく子どもたち”を増やしていきたいと思っています。」

予約が埋まらないことは、悪いことではない
―― クリニックの理想の形はありますか?
「理想は、診療枠の8割くらいが埋まっている状態ですね。
残りの2割は、新しい患者さんがいつでも来られる余裕を残しておきたいんです。
起立性調節障害のクリニックの中には、
“予約が何か月も取れない”というところもあります。
一見すると人気のように見えますが、
よく考えると、患者さんが卒業できていないから増え続けているという側面もあるんですね。
私は、できるだけ早く回復してもらい、卒業していく。
そして新しい患者さんを受け入れる。
そういう循環が生まれる医療の方が、
子どもたちにとっても社会にとっても健全だと思っています。」
起立性調節障害は「予防できる病気」かもしれない
―― 先生は、この病気そのものを減らしたいと考えているそうですね。
「はい。
私は、起立性調節障害は“予防できる可能性がある病気”だと思っています。
腸内環境、栄養状態、生活習慣。
こうしたことをきちんと整えていれば、発症しないケースも多いのではないかと感じています。
実際、栄養や腸内環境を整えることで、
症状が改善するお子さんをたくさん見てきました。
だから私は、
“朝起きられない子どもがいない社会”
“不登校で苦しむ子どもがいない社会”
そういう未来を本気で目指したいと思っているんです。
昔は、今ほどこの病気は多くありませんでした。
ということは、今の環境の中に何か原因があるはずなんです。
それを一つずつ見直していけば、
この病気そのものを減らしていくことは、決して不可能ではないと思っています。」

医療の役割は「治すこと」
―― 医療のあり方について、先生の考えを教えてください。
「私は、医者の仕事は“治すこと”だと思っています。
もちろん、症状を和らげることも大切です。
でも、それだけで終わってしまっていいのかという疑問は、ずっと持っていました。
目の前に困っている患者さんがいて、
その人が良くなる方法があるのなら、それを探し続ける。
それが臨床医の役割だと思っています。
私自身も、まだまだ学び続けています。
最近は、栄養療法を行っている他の医師とも情報交換をしながら、
より良い治療方法を取り入れていこうとしています。
医療は、常に進化していくものです。
だから私自身も止まらずに学び続けていきたいですね。」
「起立性調節障害をなくしたい」
―― 最後に、これからの目標を教えてください。
「一番の目標は、
起立性調節障害で苦しむ子どもを減らすことです。
理想を言えば、この病気自体がなくなってほしい。
もちろん、今は診療を通して一人ひとりの患者さんと向き合うことが大切です。
でもその先には、もっと大きな目標があります。
栄養の知識がもっと広まり、
家庭の食事や生活が整い、
子どもたちが元気に学校に通える。
そんな社会になれば、
そもそも起立性調節障害という病気は減っていくはずです。
だから私は、
治療だけではなく、栄養や生活の大切さも発信し続けていきたいと思っています。
起立性調節障害をなくす。
それが、私の本当の目標ですね。」




