倦怠感・疲労感

倦怠感や疲労感は、起立性調節障害(OD)の診断基準にも含まれる、非常に出現しやすい症状の一つです。外来診察中でも、「すぐに横になりたくなる」「座っていることもつらい」と訴える様子が多く見受けられます。これらの症状があると、日常生活や学校生活に大きな支障をきたし、特に思春期の10〜16歳の子どもたちに多く見られるため、不登校につながるケースもしばしば見受けられます。また、周囲から「ただのサボりでは?」という誤解を受けやすく、これが心理的ストレスを引き起こす要因にもなります。そのため、周囲の正しい理解とサポートが、症状の改善には欠かせません。

倦怠感の原因と自律神経のバランス
倦怠感や疲労感が生じる主な原因の一つとして、自律神経のバランスの乱れが挙げられます。通常、健康な人では活動時に交感神経が働き、休息時には副交感神経が優位に切り替わるよう自律的に調整されています。しかし、OD患者ではこのバランスが崩れており、血圧の調節がうまく行われず低血圧の状態が持続することがあります。そのため、交感神経の活動が不十分になり、活動のスイッチが入らず、常に疲労を感じやすくなるのです。このような状態が続くことで、日常生活や学校生活に大きな支障が生じ、不登校につながるケースもしばしば見られます。
隠れ貧血と栄養不足による影響
当院では、鉄欠乏性貧血や隠れた栄養失調が、倦怠感や疲労感を引き起こしている可能性もあると考えています。鉄分は体内で酸素を運ぶ重要な役割を果たすだけでなく、神経伝達物質の生成にも必要不可欠です。鉄が不足すると、体中の細胞が酸欠状態となるだけでなく、精神面でも不安定になり、自律神経に影響を及ぼす可能性が高まります。このため、鉄分が不足した状態では、交感神経の働きが不十分になりやすく、慢性的な疲労や倦怠感が生じやすくなります。
こうした貧血の有無を慎重に判断するために、当院では血液検査や診断的治療を用いて詳細な検査を行っています。また、必要に応じて鉄剤の処方や栄養指導も行い、見逃されがちな貧血や栄養不足を改善することで、患者様がより健やかな日常生活を送れるようサポートしています。

他の疾患の可能性とその検査
倦怠感や疲労感は、起立性調節障害(OD)以外の疾患でも頻繁に見られる症状です。そのため、他の疾患が関与していないかを慎重に見極めることが重要です。以下に関連する代表的な疾患について説明いたします。
鉄欠乏性貧血
鉄分が不足することで貧血が起こり、酸素の供給が不十分となり体が酸欠状態に陥ります。これにより、倦怠感や疲労感が引き起こされます。当院では、単にヘモグロビン値を見るだけではなく、フェリチンやMCV、TIBCなどの数値を総合的に評価し、必要に応じて鉄剤を処方することで症状の改善を図ります。
うつ病
長期間にわたる気分の落ち込みや無気力、疲労感などが主な症状です。身体的な疲労とともに精神的な倦怠も現れるため、日常生活に大きな影響を及ぼします。うつ病が疑われる場合は、専門機関への相談をお勧めします。
発達障害
注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害は、睡眠障害を併発しやすく、結果として疲労感や倦怠感が生じることがあります。睡眠リズムが不安定になりやすいため、日中の活動にも影響を与えます。
甲状腺機能異常
甲状腺ホルモンは体の代謝を司り、ホルモンバランスが崩れると倦怠感が発生します。特に甲状腺機能低下症の場合は疲れが取れにくく、逆に機能亢進症では夜の睡眠が妨げられるために、日中に倦怠感が出ることもあります。
副腎機能低下
コルチゾールなどのホルモンが十分に分泌されなくなると、慢性的な疲労や倦怠感が発生します。特にストレスが長期間続くことで副腎に負担がかかり、体力が低下する場合もあります。
心臓病
心不全や不整脈、冠動脈疾患などがあると、血液循環が低下し、体全体に十分な酸素が行き渡らず、倦怠感や疲労感が生じます。
膠原病
膠原病の中でもリウマチは朝に特有のこわばりや倦怠感を引き起こすことがあり、疲労が続く場合があります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が一時的に止まることで、深い睡眠が確保できず、日中に疲労感や倦怠感が出やすくなります。
学校や仕事のストレス
長期間にわたる精神的・社会的なストレスも、倦怠感を引き起こす要因となり得ます。ストレスが自律神経に影響を与えることで、心身ともに疲労が蓄積します。

当院の診断とサポート
当院では、朝起きられない症状やその他の体調不良の原因を特定し、適切な治療へと導くために、まずは丁寧な問診を行います。その後、必要に応じて以下の検査を実施し、さまざまな疾患の可能性を慎重に除外しながら診断を進めていきます。
新起立試験: 起立時の血圧や心拍数の変動を確認し、起立性調節障害の可能性を評価します。
血液検査: 鉄分や栄養状態を詳細に分析し、体内の不足が疑われる場合は栄養補給を指導します。
画像検査: 必要に応じ、CTやMRIなどの画像検査を連携病院で実施し、内臓や脳の異常の有無を確認します。
耳鼻科・眼科的疾患の鑑別: めまいや立ちくらみなどがある場合、耳鼻科や眼科での専門的な診断が必要と判断されれば、適切な専門医との連携を図ります。
診断後は、ほとんどの患者様に対して栄養指導を行い、プロテインや鉄剤の摂取を推奨しています。最近では、プロバイオティクスの観点から腸内環境の整備も取り入れており、ご希望の方にはその具体的な方法もお伝えしています。特に栄養療法は、短期間での改善が期待できる方もおり、1週間ほどで何らかの症状軽減を感じる患者様もいらっしゃいます。多くの場合、3か月ほど継続していただくと、初診時より体調が改善していることを実感いただけます。
プロテインや鉄剤の摂取が難しい患者様には、個々の状況に合わせた対応策をご提案し、ご家族と一緒に最適な方法を見つけながらサポートを続けていきます。また、親御様や学校関係者への説明も積極的に行い、周囲の理解を得られるようお手伝いをしております。患者様やご家族が安心して治療に臨めるよう、長期的に寄り添いながら支援してまいります。
サポートの継続
当院では、初診から栄養療法や生活指導を開始し、3か月ほどで多くの患者様が体調の改善を実感されています。偏食や錠剤の摂取が難しい患者様には、無理なく続けられるよう個別に工夫した方法を提案し、日々のケアが負担とならないよう支援しています。また、ご家族や学校など周囲のサポートが必要な場合も、どうぞご相談ください。患者様が安心して治療を続けられるよう、長期にわたりしっかりとサポートいたします。









