「通い続けないクリニック」を目指して ―― 山口里恵が語る“卒業する医療”
2026.4.17
「Health&Cureクリニック赤坂」を訪れる患者さんの多くは、
起立性調節障害(OD)や慢性的な体調不良に悩む子どもたちと、そのご家族です。
何ヶ月も学校に行けない。
朝起きられない。
どこに相談しても「様子を見ましょう」と言われる。
そんな状況の中で、ようやく辿り着く方も少なくありません。
しかし山口里恵院長は、
クリニックの理想像について、少し意外な言葉を口にします。
「理想は、患者さんがどんどん“卒業していくクリニック”なんです。」
今回は、山口院長が大切にしている
“卒業する医療”という考え方について、お話を伺いました。
「患者さんが減っていくクリニック」が理想
―― 先生は“卒業する医療”という言葉をよく使われますね
「はい。私は、患者さんにずっと通い続けてもらう医療を目指しているわけではないんです。
もちろん体調を整えるために一定期間の治療は必要です。でも最終的には、元気になってクリニックを卒業していくことが一番ですよね。
だから私の理想は、患者さんがどんどん良くなって卒業していくクリニックなんです。
たとえば診療枠が100あるとしたら、
常に70〜80くらい埋まっている状態が理想かなと思っています。
残りの枠は、新しく困っている患者さんがすぐ来られるようにしておきたい。
そのためには、今通っている患者さんが元気になって卒業していくことが大前提なんです。」

「予約が取れないクリニック」が理想とは限らない
―― 起立性調節障害の専門外来は、数ヶ月待ちのところも多いですよね
「そうなんです。でも、そこは少し冷静に考えてみてほしいんです。
予約が何ヶ月も取れないクリニックって、一見すると人気のように見えますよね。
でも、もし患者さんがどんどん回復して卒業していく医療だったら、
そんな状態にはならないはずなんです。
起立性調節障害のお子さんは、思春期という大事な時間を過ごしています。
友達と過ごす時間
学校生活
部活動
受験
どれも、その時期にしか経験できないものです。
だから私は、
『順番を待ってください』ではなく、
“できるだけ早く介入して回復してほしい”
と思っています。」
実際に“卒業”した子どもたち
―― 回復して卒業していく患者さんの例もあるのでしょうか
「あります。たとえば、小学校6年生の女の子がいました。
最初に来院したのは5月で、
その頃はほとんど学校に行けない状態でした。
土曜日だけ、数時間なんとか行ける。
そんな状況だったんです。
すでに心療内科にも通っていて、起立性調節障害と診断されて薬も飲んでいましたが、あまり改善していませんでした。
診察してみると、食事内容や栄養状態にかなり課題がありました。
そこで、
・食事内容の見直し
・鉄などの栄養補充
・酵素ジュースによる腸内環境の改善
こういったことを、ご家族と一緒に取り組んでもらいました。
すると夏頃には体調がかなり安定してきて、
9月には学校にほぼ毎日通えるようになったんです。
そしてその子は、その後中学受験にも合格しました。
体調も安定して、血液検査の数値も改善していたので、
そのタイミングで“卒業”という形になりました。
ご家族と一緒に、本当に喜びましたね。」

医師も“進化し続ける”必要がある
―― 卒業を目指す医療を実現するために、大切にしていることは何でしょうか
「私自身も、常に学び続けることだと思っています。
起立性調節障害の背景には、
・栄養状態
・腸内環境
・ホルモンバランス
・生活習慣
さまざまな要因が関係しています。
だから診療の中でも、
『これが絶対の正解』と決めつけるのではなく、
“もっといい方法がないか”
ということを常に探しています。
最近も、栄養療法で起立性調節障害を改善している先生と情報交換をして、新しい視点を取り入れようとしています。
医師も止まってしまったら、
患者さんを卒業に導くことはできませんから。」
医療のゴールは「通い続けること」ではない
―― 最後に、患者さんやご家族へ伝えたいことはありますか
「クリニックに来る時は、ぜひ“卒業するつもり”で来てほしいと思っています。
もちろん、簡単なことではありません。
生活習慣を変えること
食事を整えること
栄養を意識すること
ご家族の協力も必要になります。
でも、実際にそれを続けてくれたご家庭では、
子どもたちが元気を取り戻して卒業していく姿をたくさん見てきました。
医療の役割は、患者さんを“通わせ続けること”ではありません。
本当に元気になって、
もう通院しなくてもいい状態になること。
それが一番のゴールだと思っています。
これからも、一人でも多くの子どもたちが
元気になってクリニックを卒業していく――
そんな医療を続けていきたいですね。」




