Health & Cureクリニック 赤坂

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院長ブログ

起立性調節障害を得意とするクリニック

朝起きられない子に、まず見てほしい「鉄」のこと ―― 隠れ貧血とフェリチンから考える、子どもの不調 

2026.8.7

朝、何度声をかけても起きられない。
起きても顔色が悪く、体が重そうに見える。
学校へ行きたい気持ちはあるのに、体がついてこない。

そんな子どもの様子を前に、親御さんは悩みます。

「生活リズムが悪いのかもしれない」
「気持ちの問題なのかもしれない」
「自分の育て方が悪かったのではないか」

けれど、その背景には、本人の気持ちだけでは説明できない“体の不足”が隠れていることがあります。

そのひとつが、鉄分不足です。

ESSE onlineでも、山口里恵院長のインタビューとして、朝のつらさと鉄分不足、そして健康診断では見えにくい「隠れ貧血」について紹介されました。

今回は、ESSEの記事でも取り上げられた「鉄」「フェリチン」「隠れ貧血」について、診療の現場で山口院長が感じていることを、改めて伺いました。

「朝起きられない」は、怠けではないかもしれない

―― 鉄分不足と朝のつらさには、どんな関係があるのでしょうか?

「朝起きられないという症状は、どうしても“怠けているのではないか”“気持ちの問題なのではないか”と思われやすいんです。

でも、実際に診療していると、鉄分不足が背景にあるお子さんはとても多いと感じています。

鉄は、体の中でエネルギーをつくるために欠かせない栄養素です。

私たちの体は、食べたものをエネルギーに変えて動いています。
そのエネルギーをつくる過程で、鉄がとても重要な役割を持っているんですね。

鉄が不足すると、エネルギーをうまくつくれなくなります。
体に酸素を運ぶ力も落ちやすくなるので、全身が酸欠のような状態になって、不調が出やすくなるんです。

朝起きるというのは、実はすごくエネルギーがいることです。

だから、鉄が足りていない子にとっては、朝起きること自体がとても大変になってしまうんです。」

鉄は、心の安定にも関わっている

―― 鉄は貧血だけでなく、自律神経にも関係するのでしょうか?

「はい。鉄は、単に血液の問題だけではありません。

鉄は、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質をつくるためにも必要です。

セロトニンは、心の安定や睡眠、自律神経のバランスにも関わる物質です。
ドーパミンは、やる気や集中力にも関係します。

つまり鉄が不足すると、体がだるいだけではなく、気分が落ち込みやすい、イライラしやすい、やる気が出ない、朝がつらいといった状態につながることがあるんです。

特に起立性調節障害のお子さんを診ていると、朝起きられない、立ちくらみがある、倦怠感が強い、学校に行けないという症状の背景に、鉄不足が関わっているケースをよく見ます。

だから私は、朝起きられない子を見たときに、まず“体の中で何が足りていないのか”を見てあげることが大切だと思っています。」

健康診断では見えにくい「隠れ貧血」

―― ヘモグロビンが正常でも、鉄不足のことがあるのでしょうか?

「あります。

一般的な健康診断では、ヘモグロビンの数値を見ることが多いと思います。

でも、ヘモグロビンが正常でも、体の中の鉄の貯金である“フェリチン”が低いことがあります。

フェリチンは、体にどれくらい鉄の蓄えがあるかを見る指標です。

たとえるなら、ヘモグロビンは今使っているお財布の中のお金で、フェリチンは銀行にある貯金のようなものです。

お財布にはまだお金が残っているように見えても、貯金がほとんどない状態だと、体は余裕を失っていきます。

だから、ヘモグロビンだけを見ると“貧血ではありません”と言われても、実際にはフェリチンが低くて、だるさや朝のつらさが出ていることがあるんです。

これが、いわゆる隠れ貧血のような状態です。」

子どもと女性は、鉄を失いやすい

―― 隠れ貧血は、どんな人に起こりやすいのでしょうか?

「特に多いのは、成長期のお子さんと、生理のある女性です。

成長期の子どもは、体を大きくするためにたくさんの栄養を使います。
骨も筋肉も血液もつくっていく時期なので、鉄の需要がとても高いんですね。

そこに食事量が足りなかったり、偏食があったり、タンパク質や鉄を十分に摂れていなかったりすると、鉄の貯金がどんどん減っていきます。

女の子の場合は、月経が始まるとさらに鉄を失いやすくなります。

だから、小学校高学年から中学生くらいの時期は、本当に注意して見てあげたい時期です。

この時期に、朝起きられない、顔色が悪い、疲れやすい、めまいがある、動悸がする、気分が落ち込みやすいといった症状がある場合は、鉄不足が関係していないかを考えてみてもいいと思います。」

「異常なし」と言われても、つらさが残る理由

―― 検査では問題ないと言われたのに、つらい子もいます

「親御さんとしては、病院で“異常なし”と言われると、安心する一方で、困ってしまうこともあると思います。

でも、本人はつらい。
朝起きられない。
学校に行けない。
顔色も悪い。
元気がない。

そうなると、“やっぱり気持ちの問題なのかな”と思ってしまう方も多いんです。

でも、検査で何を見るかによって、見えるものは変わります。

ヘモグロビンだけでは見えない鉄不足もあります。
フェリチンを見て初めて、体の中の鉄の蓄えが少ないとわかることもあります。

だから私は、“異常なし”と言われたとしても、症状が続いているなら、体の状態をもう少し丁寧に見てあげることが大切だと思っています。」

鉄は、食事から摂ることが基本

―― 家庭では、どんなことから始めるとよいのでしょうか?

「まず基本は、食事です。

鉄には、肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜などに含まれる非ヘム鉄があります。

私は、特に動物性のヘム鉄をしっかり摂ることをおすすめしています。

野菜から鉄を摂ろうとすると、現実的にはかなりの量を食べる必要があります。
もちろん野菜も大切ですが、鉄を補うという意味では、肉や魚をしっかり食べることが大切です。

ESSE onlineの記事でも紹介していただきましたが、わが家では骨つき肉を煮込んだボーンブロススープをよく作ります。

骨つき肉と、天日干しの海の塩と、あればニンニク、タマネギ、セロリなどの香味野菜を一緒に煮込むだけです。
特別なレシピというより、冷蔵庫にあるものでコトコト煮込む感じですね。

朝はそこに卵を落としてスープにしたり、カレーやミネストローネのだしにしたりします。

忙しい家庭でも、作り置きできる形にしておくと続けやすいと思います。」

吸収を助ける食べ方、妨げる習慣

―― 鉄を摂るときに、気をつけることはありますか?

「鉄は、摂ればいいというだけではなく、吸収されることが大切です。

たとえば、ビタミンCは鉄の吸収を助けてくれます。
朝食のあとにフルーツを食べたり、お肉にレモンをかけたりするのは、理にかなった食べ方です。

一方で、カフェインは鉄の吸収を妨げることがあります。

せっかく鉄を摂っても、食後すぐにコーヒーやお茶を飲んでしまうと、吸収が悪くなることがあります。

特に鉄不足が気になる方や、自律神経の不調がある方は、食後すぐのカフェインは避けて、少し時間をあけることをおすすめしています。」

サプリは、自己判断で続けすぎない

―― 鉄のサプリを使う場合に注意することはありますか?

「鉄は大切な栄養素ですが、やみくもに摂ればいいわけではありません。

鉄の摂りすぎが体に負担になる可能性もあるため、サプリや市販薬を使う場合でも、できれば採血で状態を確認しながら進めてほしいと思っています。

特にお子さんの場合は、今どれくらい足りていないのか、補充が必要なのか、どのくらい続けるのかを見ながら進めることが大切です。

最終的には、サプリに頼り続けるのではなく、食事からしっかり鉄を摂れる体になることが理想です。

そのためにも、鉄を入れることだけではなく、腸内環境を整えて、栄養を吸収できる体にしていくことも大切だと思っています。」

早く気づけるほど、回復も早くなる

―― 症状がある場合、いつ相談するのがよいのでしょうか?

「できれば、早めに相談してほしいです。

私の診療の中では、症状が出てから栄養療法を始めるまでの期間と、栄養療法を始めてから良くなるまでの期間が、だいたい同じくらいになる印象があります。

つまり、発症してから時間が経ってしまうほど、回復にも時間がかかりやすいということです。

もちろん個人差はあります。
でも、早く気づいて、早く体の不足を補ってあげることは、とても大切です。

朝起きられない。
だるさが続く。
顔色が悪い。
立ちくらみがある。
学校に行けない日が増えている。

そういう状態が続いているなら、“そのうち治るだろう”と待ちすぎず、一度相談してほしいと思います。」

気持ちの問題にする前に、体を見てあげたい

―― 最後に、親御さんへ伝えたいことはありますか?

「子どもが朝起きられないと、親御さんも本当に苦しいと思います。

毎朝起こして、声をかけて、それでも起きられない。
学校に行けない日が増えていく。
本人もつらそうにしている。

そういう日が続くと、“どうしてできないの?”と思ってしまうこともあるかもしれません。

でも、そこには体の理由があるかもしれません。

鉄が足りない。
フェリチンが低い。
エネルギーがつくれない。
自律神経がうまく働かない。

そうした状態で、本人だけの努力で朝起きるのは、とても大変なことです。

だから、まずは責める前に、体を見てあげてほしいんです。

朝起きられないのは、怠けではないかもしれない。
根性がないからではないかもしれない。
体の中で、必要なものが足りていないサインかもしれない。

そういう視点を、少しでも多くの親御さんに持ってもらえたら嬉しいです。」

ESSE onlineでは、鉄分不足と朝のつらさ、隠れ貧血について、家庭でできる食事の工夫も含めて紹介されています。

「朝がつらい原因は“鉄分不足”かも。3児の母・医師がつくり続ける『鉄分最強スープ』を紹介」
https://esse-online.jp/articles/-/36752

「女性や子どもに多い『隠れ貧血』に要注意。朝のだるさ、自律神経の乱れの原因にも」
https://esse-online.jp/articles/-/36808

気になる症状が続いている方は、ぜひあわせてご覧ください。

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