Health & Cureクリニック 赤坂

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院長ブログ

起立性調節障害を得意とするクリニック

お母さんだけが頑張らなくていい ―― 家族で食事を変えることが、子どもの回復につながる 

2026.8.21

子どもが朝起きられない。
学校に行けない日が続く。
体調が安定せず、食事や生活を整えたいけれど、何から始めればいいかわからない。

そんなとき、多くのご家庭で負担を抱えやすいのは、お母さんです。

朝起こすこと。
食事を考えること。
病院を探すこと。
学校とやり取りすること。
子どもの気持ちを受け止めること。

その一つひとつを、気づけばお母さんが背負っていることがあります。

けれど、子どもの回復は、お母さん一人の努力だけで支えるものではありません。

食事は、家族全体のものです。
そして、子どもの体をつくる毎日の習慣も、家族で少しずつ変えていくことができます。

今回は、山口里恵院長が考える「家族で食事を変えること」について伺いました。

食事の負担が、お母さんに偏りすぎている

―― 食事改善を進めるうえで、気になっていることはありますか?

「ずっと気になっているのは、食事のことになると、どうしてもお母さんだけに負担がいきやすいということです。

もちろん、お母さんが一生懸命頑張っているご家庭は本当に多いです。

でも、本当はお母さんだけが全部抱えなくていいと思っています。

子どもの体をつくる食事は、家族全体のことです。

お父さんが作れるようになってもいい。
お子さん自身が、自分の朝ごはんや補食を用意できるようになってもいい。

食事改善というと、お母さんがもっと頑張らなければいけないもののように感じられてしまうかもしれません。

でも、私が目指したいのは、誰か一人が無理をする形ではなく、家族みんなで少しずつ変わっていく形なんです。」

子ども自身が、食事に関わってもいい

―― 体調が悪い子ども自身が、料理に関わることもあるのでしょうか?

「もちろん、体調が悪いときに無理をさせる必要はありません。

起立性調節障害のお子さんは、朝起きるだけでも大変なことがあります。
学校に行けない時期に、何かを頑張らせようとすることが負担になる場合もあります。

でも、その子の体調に合わせながら、家でできることを少しずつ増やしていくことは、とてもいいステップになると思っています。

たとえば、自分の補食を用意してみる。
塩むすびを作ってみる。
味噌汁に卵を落としてみる。
簡単なスープを作ってみる。

小さなことでいいんです。

“学校に行くか、家で寝ているか”だけではなく、家にいる時間の中で、自分の体を整えるためにできることを一つ見つける。

それが、回復への前向きな一歩になることがあります。」

山口院長が大切にしているのは、子どもを追い立てることではありません。

子ども自身が、自分の体に少しずつ関心を持つこと。
何を食べると調子が整いやすいのかを知ること。
自分の体を守る方法を、生活の中で身につけていくこと。

それは、治療の一部であり、将来にも残る力になります。

「できるわけない」を、家族で越えていく

―― 栄養の話を聞いても、家で続けるのは難しいという声もあります

「本当にそうだと思います。

診察室では、塩むすび、ボーンブロススープ、卵の使い方、タンパク質の摂り方など、できるだけお伝えしています。

でも、聞いたことを家で続けるのは簡単ではありません。

“いいことはわかったけれど、実際にどうすればいいかわからない”
“忙しい朝にそこまでできない”
“子どもが食べてくれるかわからない”

そう感じるのは自然なことです。

だからこそ、家族の中で誰か一人だけが頑張るのではなく、みんなで少しずつ関わっていくことが大切だと思っています。

お父さんが味噌汁を作る。
子どもが自分のおにぎりを握る。
きょうだいが一緒に食卓を囲む。

それだけでも、食事改善は“お母さんの仕事”ではなく、“家族の習慣”に変わっていきます。」

食事は、毎日のことです。

だからこそ、完璧を目指すと続きません。
一人で抱えると苦しくなります。

でも、家族で役割を分けることができれば、少し軽くなります。

そして、食事を整えることが、家族全体の回復のきっかけになることもあります。

家族で食卓をつくる時間が、子どもの力になる

―― 山口院長ご自身の家庭で感じていることはありますか?

「私自身も、毎日すべてを完璧にできているわけではありません。

仕事も忙しいですし、家庭のこともあります。

そんな中で、うちの長女が週に一度、献立から料理まで担当してくれているんです。

汁物と、メインと、ご飯と。
自分で考えて、作ってくれます。

それが本当にありがたいですし、彼女自身の力にもなっていると思っています。

弟や妹も、お姉ちゃんが作ってくれた料理を“おいしい”と言って食べるんですね。

その時間が、すごく幸せなんです。

もちろん、どのご家庭にも同じことをしてほしいという話ではありません。

でも、子どもが食事に関わることは、その子にとっても、家族にとっても、とてもいい経験になると思っています。」

料理は、ただ食べ物を作るだけではありません。

家族に食べてもらう。
「おいしい」と言ってもらう。
自分が役に立てたと感じる。

そうした経験が、子どもの自信につながることもあります。

体調が悪い時期でも、できることが一つある。
家族の中で役割を持てる。
誰かに喜んでもらえる。

それは、回復の過程でとても大切な感覚です。

食事は、卒業したあとも残る力になる

―― これは「卒業する医療」という考え方にもつながりますか?

「はい。とてもつながっていると思います。

私は、患者さんにずっと通い続けてほしいと思っているわけではありません。

体が整って、元気になって、いつかクリニックを卒業していく。
それが理想です。

でも、卒業したあとも、その子の生活は続いていきます。

そのときに、自分の体を整える食事を知っていること。
調子が崩れそうなときに、どう立て直せばいいかを知っていること。
家族で食事を整える習慣が残っていること。

それは、クリニックを卒業したあとも、その子を支える力になります。

料理や食事の知識は、一度身につけば、何年も何十年も使えるものです。

だから、食事を学ぶことは、治療のためだけではなく、その子の人生を支える財産になると思っています。」

家族が変わるきっかけに

―― 最後に、親御さんへ伝えたいことはありますか?

「子どもの不調が続くと、親御さんは本当に苦しいと思います。

特にお母さんは、自分がもっと頑張らなければいけないと思ってしまうことが多いかもしれません。

でも、お母さんだけが全部背負わなくていいんです。

お父さんが関わってもいい。
子ども自身が少しずつ関わってもいい。
家族みんなで、できることを一つずつ増やしていけばいいと思います。

完璧な食事を目指さなくて大丈夫です。

まずは、塩むすびを作る。
味噌汁に卵を入れる。
ボーンブロススープを一度作ってみる。
子どもが自分の補食を用意してみる。

小さな一歩で十分です。

その一歩が、家族の習慣を変えるきっかけになることがあります。

食事は、子どもの体をつくります。
そして、家族で食事を変えていくことは、子どもの回復を支える大きな力になります。

お母さんだけが頑張るのではなく、家族みんなで子どもの体を支えていく。

そんな形を、少しずつ広げていけたらと思っています。」

子どもの不調は、家族全体に影響します。

だからこそ、回復もまた、家族全体で支えていくことができます。

食卓を変えること。
役割を分けること。
子ども自身が、自分の体を守る方法を知っていくこと。

その積み重ねが、今日の体調だけでなく、子どものこれからの人生にもつながっていきます。

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