Health & Cureクリニック 赤坂

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院長ブログ

起立性調節障害を得意とするクリニック

子どもの心と体は、毎日の食事で変わっていく ―― タンパク質・腸内環境・生活習慣から考える、自律神経の整え方 

2026.7.24

新学期や長期休暇明け。
環境が変わるタイミングで、子どもの体調が崩れやすくなることがあります。

朝起きられない。
だるさが抜けない。
気分が落ち込みやすい。
眠れない。
学校に行くことがつらくなる。

そうした不調は、心の問題だけで起きているとは限りません。

体をつくる材料が足りているか。
腸内環境は整っているか。
睡眠のリズムは崩れていないか。

日々の食事や生活習慣の中に、子どもの心と体を支える大切な土台があります。

ESSE onlineでは、山口里恵院長のインタビューとして、タンパク質、腸内環境、セロトニン、睡眠、自律神経について紹介されました。

今回は、ESSEの記事でも取り上げられた内容をもとに、診療の現場で山口院長が大切にしている「食事と生活から子どもの体を整える」という考え方について、改めてお話を伺いました。

五月病のような不調は、体からのサインかもしれない

―― 新しい環境で体調を崩す子どもたちを、どう見ていますか?

「新学期や長期休暇明けは、子どもたちにとって思っている以上に負荷がかかる時期です。

クラスが変わる。
先生が変わる。
生活リズムが変わる。
人間関係も変わる。

そういう変化に対して、心だけではなく、体も一生懸命対応しようとしています。

そのときに、体の材料が足りていなかったり、腸内環境が乱れていたり、睡眠のリズムが崩れていたりすると、ストレスを跳ね返す力が弱くなってしまうんです。

“五月病”という言葉で片付けられることもありますが、私はその背景に、栄養や自律神経の問題が隠れていることも多いと感じています。

だから、気持ちの問題として見るだけではなく、体の土台から見てあげることが大切だと思っています。」

タンパク質は、心と体を支える材料になる

―― ESSE onlineでは、タンパク質の大切さも紹介されました

「タンパク質は、体をつくる基本の材料です。

筋肉だけではなく、皮膚、髪、血液、ホルモン、酵素、免疫物質など、体のいろいろなものがタンパク質からつくられています。

そして、心の安定に関わるセロトニンをつくるためにも、タンパク質は必要です。

セロトニンが十分に満たされていないと、少しのストレスも大きなストレスとして感じやすくなります。

特に成長期の子どもは、体を大きくするためにタンパク質をたくさん使います。
その時期にタンパク質が足りていないと、体の成長だけではなく、心の安定にも影響が出やすくなるんです。

思春期の子どもたちが不安定になりやすい背景にも、栄養の不足が関係していることがあると感じています。」

完璧な朝食より、続けられる工夫を

―― 家庭では、どのようにタンパク質を取り入れればよいのでしょうか?

「タンパク質は、一度にたくさん摂るよりも、こまめに摂ることが大切です。

一回で吸収できる量には限りがありますし、体の中に入ったタンパク質は数時間で使われていきます。

だから、毎食少しずつ入れてあげることが大事なんですね。

でも、忙しい朝に完璧な朝食をつくるのは大変です。

だから私は、“ちょい足し”でいいと思っています。

卵、しらす、ツナ、かつお節、納豆、チーズ。
こうしたものを、ご飯や味噌汁、サラダ、焼きそばなどに少し足すだけでも違います。

ESSE onlineの記事では、わが家でよく作っているおにぎらずや、卵入りの味噌汁、前日の残り物を使ったどんぶりなども紹介していただきました。

前日の夕飯を朝に回すくらいの感覚でいいんです。

“タンパク質を摂らなきゃ”と構えすぎるより、毎日の食卓の中で自然に続けられる形にすることが大切だと思っています。」

腸内環境は、自律神経の土台になる

―― 腸と自律神経には、どのような関係があるのでしょうか?

「私が診療でとても大切にしているのが、腸内環境です。

鉄やタンパク質を摂ることはもちろん大切です。
でも、腸の状態が乱れていて吸収できなければ、せっかく摂った栄養も体の材料として使えません。

だから、栄養を入れることと同じくらい、吸収できる体に整えることが大切なんです。

腸は、栄養を吸収する場所であり、自律神経やメンタル、睡眠とも深く関わっていると考えています。

心の安定に関わるセロトニンも、腸内環境と関係があると言われています。

だから私は、起立性調節障害のお子さんを診るときにも、単に症状を見るだけではなく、腸内環境や食事の状態をとても大切にしています。」

味噌汁、海藻、バナナ。特別ではない食事が体を支える

―― ESSE onlineでは、腸内環境を整える食材も紹介されました

「腸内環境を整えるというと、何か特別なものを用意しなければいけないと思う方もいるかもしれません。

でも、まずは毎日の食事でできることがたくさんあります。

たとえば、味噌汁です。

味噌汁に海藻を入れる。
ワカメ、アオサ、ヒジキなど、日本人が昔から食べてきた食材には、腸にとって良いものがたくさんあります。

味噌も、グツグツ煮立てすぎずに使うことで、菌や酵素の力を活かしやすくなります。

あとは、朝のバナナも取り入れやすい食材です。

完熟したシュガースポットのあるバナナには、セロトニンの材料になるトリプトファンが含まれています。
朝に食べることで、日中の心の安定や、夜の睡眠リズムにもつながっていくと考えています。

毎日すごく頑張った食事をつくる必要はありません。

味噌汁をつくる。
海藻を入れる。
朝にバナナを食べる。
卵を足す。

そういう小さなことを続けるだけでも、体の土台は少しずつ変わっていくと思います。」

睡眠は、夜だけで整えるものではない

―― 生活習慣では、どんなことを大切にしていますか?

「睡眠を整えるためには、夜だけを見るのではなく、朝からのリズムを見ることが大切です。

朝日を浴びることは、とても大事です。

朝の光を浴びることで体内時計がリセットされ、日中のセロトニンの働きにもつながります。
そして、その流れが夜の眠りにも関係していきます。

夜眠れない子に対して、“早く寝なさい”と言うだけでは、なかなかうまくいきません。

まず朝に光を浴びる。
日中に少しでも体を動かす。
夕方以降は照明を少し落として、体に夜が来たことを知らせる。
シャワーだけで済ませず、湯船に浸かる。

そうした生活の積み重ねが、自律神経のリズムを整える助けになります。

食事と睡眠と光。
どれも基本的なことですが、子どもの体を整えるうえではとても大切です。」

診察室だけでは、伝えきれないことがある

―― 栄養や生活の話を、なぜここまで大切にしているのでしょうか?

「私は、起立性調節障害を現代の生活習慣病のようにとらえているのですが、診察室では、どうしても時間が限られているため、生活習慣を整える指導まで十分には行き届きません。。

本当は、食事のこと、腸内環境のこと、睡眠のこと、生活のことをもっと丁寧に伝えたいんです。

でも、一度の診察で全部を伝えるのは難しいですし、情報量も多くなってしまいます。

こちらが一生懸命話しても、家に帰って実際の生活に落とし込むのは、やっぱり簡単ではありません。

たとえば、ボーンブロススープがいいですよ、味噌汁がいいですよ、卵を入れてくださいね、とお伝えしても、それを家庭で続けるには工夫が必要です。

だから私は、知識として伝えるだけではなく、実践できる形にすることが大切だと思っています。

食べたものが体をつくります。

子どもたちは、これから何十年もその体で生きていきます。
だから、今の食事や生活を整えることは、今の不調を改善するためだけではなく、未来の体と心をつくることにもつながると思っています。」

家族みんなで変わるきっかけに

―― 食事改善は、親御さんだけが頑張るものではないのでしょうか?

「私は、食事のことが全部お母さんだけの負担になってしまうのは、違うと思っています。

もちろん、お母さんが頑張っているご家庭は本当に多いです。
でも、食事は家族全体のことです。

お父さんが作れるようになってもいい。
お子さん自身が、自分の朝ごはんや補食を用意できるようになってもいい。

学校に行けない時期があったとしても、家でできることはあります。
無理をさせるという意味ではなく、体調に合わせながら、“自分の体をつくる食事”に関わっていくことは、とても大切だと思います。

実際に、子どもが自分で簡単な料理を覚えることで、少し前向きなきっかけになることもあると思っています。

家族みんなで食事を見直す。
誰か一人が抱え込むのではなく、家族の習慣として変えていく。

そういう形が理想ですね。」

食事は、卒業したあとも残る力になる

―― 先生が目指す「卒業する医療」ともつながりますか?

「はい。とてもつながっていると思います。

私は、患者さんにずっと通い続けてほしいと思っているわけではありません。
元気になって、クリニックを卒業していくことを目指しています。

でも、卒業したあとも、その子の生活は続いていきます。

そのときに、何を食べれば体が整いやすいのか。
朝つらいときに、どう立て直せばいいのか。
自分の体に必要なものを、どう選べばいいのか。

そういう知識や習慣が残っていれば、卒業したあとも自分の体を守る力になります。

食事は、毎日のことです。
だからこそ、診療の中だけで終わらない力になると思っています。

子ども自身が、自分の体を大切にする方法を知っていく。
家族も一緒に変わっていく。

それは、治療の一部であり、その先の人生を支える財産にもなると思っています。」

気持ちの問題にする前に、食事と生活を見直してほしい

―― 最後に、親御さんへ伝えたいことはありますか?

「朝起きられない。
だるい。
眠れない。
学校に行けない。
気分が落ち込みやすい。

そういう症状があると、どうしても心の問題として見られがちです。

もちろん、心のケアが必要な場合もあります。
でも、その前に、体の土台を見てあげてほしいと思っています。

タンパク質は足りているか。
腸内環境は整っているか。
鉄は足りているか。
朝日を浴びられているか。
眠れる体のリズムがつくれているか。

そうした基本的なことの中に、改善のきっかけが隠れていることがあります。

完璧にやろうとしなくて大丈夫です。

卵を足す。
味噌汁をつくる。
海藻を入れる。
朝にバナナを食べる。
少し外に出て光を浴びる。

まずは、できることからでいいんです。

子どもの不調を、気持ちの問題だけで片付けないでほしい。
体のサインとして見てあげてほしい。

そして、日常生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関へ相談してほしいと思います。」

ESSE onlineでは、タンパク質の摂り方や、腸内環境を整える食事・生活習慣について、家庭で取り入れやすい形で紹介されています。

「五月病の不調に効く“タンパク質の摂り方”は?3児の母・医師の『リアルな朝食』も紹介」
https://esse-online.jp/articles/-/37017

「五月病にも効果あり!自律神経が整う『無敵フード』2つ。バナナの“最強の食べ方&選び方”も」
https://esse-online.jp/articles/-/37130

気になる症状が続いている方は、ぜひあわせてご覧ください。

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